狙っているのは、油断じゃない。良心だ。 [旅「ヨーロッパ」]
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日曜日の午前中、カスコロ広場から延びる坂道にはぎっしりと露店が立ち並んでいた。麦わら帽子から骨董品まで手に入る蚤の市。集まった人の波は大きなうねりを作り出していた。カルメンと手をつなぎ、人ごみをかき分けて歩いた。一瞬、僕らは渦に飲み込まれた。抜け出すまで1分間もかからなかっただろう。渦から顔を出すと、彼女が呆然としていた。どうしたの?と尋ねると、彼女は青い顔で話し始めた。人ごみの中で右側に男がいたの。男は私の右肩にタバコの灰を落としたわ。ああ、ごめんなさい。男はそう言うと肩を優しくはたいたのよ。それでわたしの注意が右に向いたとき、左側で「ぱちん」と音が聞こえた。左の男とグルだったのよ。鞄を狙っていたんだわ。周りを見渡すと、誰もが人の良さそうな市民の顔をしている。この波の中にある悪意の渦は、さわやかな日曜日に暗雲を運んだ。心の隙は粒子鉄線で囲わなければいけない。いい人だけでは喰われるだけだ。
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2005-10-02 00:55
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