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【我孫子エール飯】色眼鏡で見ている景色に、レモングラスはどう映るか。 [日常]

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 「お!これどこの?中華料理えん?」僕は、テーブルの上に鎮座している60度の角度で仕切られた小部屋が並ぶ惣菜セットを見て尋ねた。「レモングラスだよ」妻は、事も無げに言った。レモングラス…頭の中の引き出しからかすかに見え隠れするこの音の並びは、以前レモンと間違えて飲んで唇が炎上したレモングラスオイルの記憶だろうか。「それ、どこにあるっけ?」僕は、もう少し踏み込んで尋ねた。「忘れたの?浜屋の隣にあるアジアンキッチンだよ」妻は、ケーキ屋の店員がポイントカードの期限切れをやんわりと指摘してくれるぐらいのトーンで答えてくれた。ありがたい、これが面倒くさそうな態度だったら、この話はここで打ち切りだ。

 浜屋。僕の大好きな我孫子のラーメン屋だ。我孫子のヒルズ族と言っても過言ではない、グランドレジデンスが見下ろす交差点を駅に向かって登る坂の中腹にあるラーメン屋だ。煮干しベースのスープは絶品で、つけ麺も無意識にそう、向こうから自転車に乗っている人がきたら同じ方向に避けてしまうぐらい自然に特盛を選んでしまうほどの言わば、誘導食だ。ツルツルシコシコの面が、濃厚なスープに絡みつく。たまらない。カウンターだけの店内で大将の顔が世界丸見えテレビ特捜部状態。あの臨場感も、味を構成する要素の一つだろう。オプションの辛子エビがまたね、いいんだよぅ。と、ここまで思考を進めたところで気が付いたのだが、今目の前にあるのは、浜屋のエビではない。そうだ、その隣のレモングラスの海老の唐揚げだ。

 思考を元に戻して、どんな店舗だったかを思い出してみる。少し薄めを開けて、遠くを見通すように。だめだ、ビジョンが浮かばない。次に第三の目を意識してみる、チャクラと呼ばれる眉間の少し上にあったと言われる目は、インドでは赤いペイントで代用されたりもする。この時、ひどく難しい顔をしていたのだろう。見事に懐かない1歳半の娘が、さらに蔑んだ目をしている。娘よ、父親のこの姿をとくと目に焼き付けておきなさい。大人は時に、超越者にならんとすることがあるのだ。時間にして10秒ほどだろうか。思い出した、洋館風のオシャレな建物と、レモングラスという黄色い文字(確かそうだ!)のドアの上の看板文字を。なぜここまで印象に出てくるのに時間がかかったのか、理由は明確だった。あの店舗は外から中が見えないのだ。いや、正確には「僕が見えていない」だけなのかもしれないが(今度確かめないと!)僕の脳裏には、壁側に人の残像はなかった。

 「あーあそこね!レモングラス!」僕は、間の抜けたように声をあげた。妻が今更かよというような顔をする。いいね、予想通りの反応だよベイビー。そうして、ようやくそのレモングラスのオードブルを舐め回すように見据えた。油淋鶏とエビの唐揚げと、生春巻。アジアンキッチンの名前に恥じないラインナップだ。油淋鶏はネギがしっかりと絡みついていて美味しそうだ。海老の色艶も悪くない、私を食べる気!?と赤ら顔で語りかけている、そんな気がする。そして生春巻。ベールのような薄皮をはぎたい欲求にかられるがそんなことをしたら、結界が崩れて取り返しのつかない惨事が訪れるのでそこはグッとこらえて、涙のリクエスト。よし、もう逡巡はいいだろう。食べるぜ!行くぜ!アジアンキッチン!世界への扉をいざ、開かん!

と、思ったら、お仕事のWEB会議開始のお時間〜。

お預け三銃士。すぐには好きにさせてくれないぜ、レモングラス、レモンハート。次は必ず店舗に行きたい。1時間後にようやく舌鼓を打った僕は、そう心に誓った。生春巻は一つだけしか残っていなかった。
https://tabelog.com/chiba/A1203/A120304/12018701/


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