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傍観者と当事者は紙一重。 [旅「アジア」]

ランドクルーザーはぬかるみにはまっていた。すぐ前にもう1台停まっている。僕らは外に出た。2台がロープで連結されているのを見ると、どうやら救出作業が始まるようだった。泥にはまっているランクルが勢い良くタイヤを回す。しかし、むなしく泥をかき回すだけで抜け出せない。いくら馬力があっても、こういうときは車より馬の方が有利だ。前方のランクルにエンジンがはいった。すぐにロープに緊張が走る。ガロロロ、ガロロロ。周りには車体を押す人々。十分な人がいるので僕らの出る幕はない。「オーエス!オーエス!」必死に叫ぶ彼ら。見守る僕ら。やがてランクルはその地獄の淵より救出された。拍手がわき上がり、乗客に安堵の笑顔が戻る。美しい光景だった。思いがけないドラマが終わったので車に戻ろうと後ろを振り返った瞬間、僕の目は高性能のカメラのような動きを始めた。コマ送りのような世界の中で、僕らのランクルがゆっくりと沼にはまっていく。


水たまりと人だかり。 [旅「アジア」]

貧乏な旅をするのはいい。個人の自由だ。だが、心まで貧しい旅人にはならないで欲しい。それは、日本国民の品位をおとしめることになり、後から訪れる後輩に迷惑がかかるからだ。話を旅に戻そう。それからしばらく同じような景色が続いた。違うのは、道に水溜まりが目立ってきたことだろうか。だが、この程度の水たまりなら、ランドクルーザーにとって心配はいらなかった。ふと、前方に見覚えがある後ろ姿が現れた。同じ型のランドクルーザーだ。道の左端に寄って停車している。車を取り囲むようにして人が集まっていた。10人はいるだろう。ランドクルーザー1台にあれだけの人数が乗ることはできないので、もう1台付近に停まっているのだろう。彼らの側まで行くと、そこら辺一帯が巨大なバケツをいくつもヒックリ返した状態になのに気がついた。なるほど、少々の雨ではこうはならない。話に聞いた10年に一度の大雨ってのもまんざら嘘では無いようだった。


優しさに包まれた旅路は、勘違いへの道。 [旅「アジア」]

これで昨日の宿泊代0円!やった!旅を続けていて思うのだが、バックパッカーの世界では1円でも安くすませたヤツが偉い観というものがある。節約の美徳。例えば、現地の人の家に招待されて飯をごちそうになる。それを武勇伝のように旅で出会った人に話す。実際は現地の人の好意に甘えているだけなのに、そこにはフィーチャーせずにいくら浮いたと自慢する。実際、アジア諸国の物価を考えたら、そこそこの日本円で全く不自由することなく旅ができるのに、あえて貧乏生活をする考え方。人の親切を食い物にして続ける旅にどんな意味があるのだろう。親切は親切として受け取って、その対価を少しでも返すことをするべきではないだろうか。確実に言えることは、決して彼らは裕福だから優しくしているのではない。ギリギリの生活の中でも、異国からわざわざ自分の国へ来てくれた者をもてなしてくれているのだ。そいつらが自分たちより裕福だとわかっていても・・・。


外国での演技には定評がある。 [旅「アジア」]

何のことだかわからないで通そう。おっさんはジェスチャーを繰り返しながら迫る。首を傾げながらいいから出発しようと、僕ら。状況を把握していないラテン系二人。おっさんは制服の胸にある旅行会社のロゴを指差して何やらまくしたてた。会社から怒られてしまうと言いたいのだろう。必死なおっさん。板挟みのおっさん。とたんに、おっさんがかわいそうに思えてきた。一番苦しんでいるのに、全く悪くない。でも、金は払いたくない。合計20分ぐらいとぼけ通しただろうか、おっさんは一旦宿に戻ると、むっつりした顔で運転席に乗り込んだ。ハンドルを握ってボソッと一言。「ケチくせえなあ」。僕にはそう聞こえた。言葉というのは不思議なもので、シチュエーションと相手の心情さえ読み取れれば何を言いたいのか伝わるものである。ワードそのものを知らなくてもわかり合えるのだ。結局、金はおっさんが立て替えたのかどうなのか定かではないが、僕らは出発した。


すっとぼけるのは、顔だけじゃ足りない。 [旅「アジア」]

シャコシャコとハンドルを回して窓を開ける。「どしたの?」何やら早口でまくしたてるおっさん。ワタシさっぱりわからないネ、中国語。おっさんは、宙に両手で四角を描く。そして今度は両手のひらを合わせてお休みのポーズ。最後に僕とリョウスケを指差してお金をよこせのジェスチャー。ピンときた。ひょっとしたらおっさんは僕たちに宿泊費を払えと言っているのかもしれない。僕らはエドワルドとホセが借りた部屋の床に寝袋で寝かせてもらっていたので、金を一銭も払っていない。うまいことやったつもりだったが、一部屋に規定人数以上泊まっているのが従業員にばれたのだろう。宿の入口に目をやるとオーナーがこちらを伺っている。ケチくさいなあ・・・。本当にケチくさいのは僕らなのだがそれは言いっこなし。ここはすっとぼけるしかない。何しろ二人合わせて200元ほどしか無いのだ。国境でネパールビザの購入もしなければならない。余っている金はない。


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