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たどり着いたら、少し足を止めるのも悪くない。 [旅「アフリカ」]

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夜中の登山は寒い。9月だというのに、ウインドブレーカーが手放せなかった。シナイ山。モーセが神から十戒を授かった山。エジプトのダハブからワゴン車に揺られ3時間。ご来光を拝むため、20人ほどの団体は巡礼者のようにぞろぞろと頂上を目指した。真っ暗な山道にいくつもの小さな明かりが灯る。ゆっくり動くリズムは神秘的な竜となり坂道を上る。3時間後、ようやくてっぺんに着いた。麦わら帽子を脇に置き腰を下ろす。ゆっくりと辺りが白くなってくる。そろそろだ。耳の側でレディオヘッドのピラミッドソングが響いた。隣のアメリカ人ジャックは63歳の旅行ライターだった。羨ましいと言うと「家族もいない。今はただ、旅することが生き甲斐だ」と、寂しそうに彼は言った。留まることの無い生活はどこに終着するのだろう。毎日変わらず昇る太陽と、裸の山肌を見ながら、この全てを見透かすような光が、彼の道をずっと照らし続けてくれればいいと思った。




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